おいしい水、爽やかな空気に恵まれた北杜市大泉町にある株式会社TRISE(トライズ)では、採れたての野菜をその日のうちに消費者の食卓に届ける「朝どれレタス」や自社ブランド「とらべじ」などを強みに、新鮮でおいしい野菜を全国に流通させている。
また、北杜市の農家ではめずらしく、適正農業規範に関する国際標準「GLOBALG.A.P.」の認証を受けており、生産工程がしっかりと管理された安心・安全な野菜を届けることに力を注いでいるというのも大きな特徴だ。
代表取締役社長の浅川和哉さんは32歳と若く、社員やアルバイトも若手が多く活躍している。
来年には“栽培面積を2倍にする”という目標を掲げる、勢いに満ちた株式会社TRISEの浅川さんは、どんな未来を思い描いているのだろう?
株式会社TRISE設立のきっかけ
株式会社TRISEは、有限会社イズミフーズ(山梨県食品加工会社)の経営のスリム化を図る目的で、野菜仕入れ部門を分社化したことをきっかけに2015年に設立された。社員7名、パート4名、役員3名からなる組織であり、レタスを中心とした野菜の自社生産と仕入れ販売の2つの車輪で事業を展開している。
昨年11月には北杜市大泉町に事務所・倉庫・大型冷蔵庫を新設し、浅川さんや他のスタッフの若い力とアイディアで、事業拡大に向け力を注いでいるところだ。
大人気の「朝どれレタス」と自社ブランド「とらべじ」
TRISEの一番の売りは、レタスを採ったその日の内に消費者の食卓に届ける「朝どれレタス」。早い時には深夜0時からヘッドライトをつけてレタスの収穫を開始し、県内外問わず販売店が開店する朝10時頃には、シャキッとした採れたてのレタスが店舗に並ぶ状態をつくっているというから驚きだ。
TRISEの畑は中央市、北杜市高根町、北杜市大泉町、野辺山高原の4箇所にあり、標高約300メートルの中央市から約1,300メートルの野辺山高原までリレーして栽培することで、春から晩秋までの野菜の安定供給を可能としている。
畑の総面積は約12ヘクタール。シーズン中は2日置きに約10,000株〜12,000千株の植え付けを行い、1日約500ケース(6,000玉)の収穫をしているが、それでも生産が追い付かないほどTRISEのレタスは人気が高いのだという。
また、TRISEでは白菜・ブロッコリーなどの高原野菜の生産も行っている。清らかな水と空気、寒暖差に恵まれた八ヶ岳高原では、味わい豊かな美味しい野菜を採ることができる。
今年からTRISEでは、それらの野菜(レタス含む)に「とらべじ」という自社ブランド名を付けて販売をはじめた。
とらべじのシールが美味しさの目印となり、都内のデパートでもすぐに完売してしまうほどの大人気。山梨のスーパーでも「とらべじの野菜はありますか?」と店員に声をかける人がいるほど注目が高まっているという。
「GLOBALG.A.P.」認証取得により、安心・安全を消費者へ
TRISEのもう一つの大きな特徴として挙げられるのが、「GLOBALG.A.P.(グローバルギャップ)」の認証を取得していることだ。G.A.P.(ギャップ) とは、GOOD(適正な)、AGRICULTURAL(農業の)、PRACTICES(実践)のことであり、GLOBALG.A.P.認証とは、それを証明する国際基準の仕組みのことを言う。
有農薬で野菜をつくっているTRISEは、GLOBALG.A.P.の認証を取得することで、法律に基づいた適正な農薬を適正に使っていることや、生産環境の管理が行き届いていることを証明し、安心・安全を食卓に届けられるようにしている。
GLOBALG.A.P.の認証を取得するには、担当者を一人付けねばならぬほど、大幅な時間と費用がかかる。約220の検査項目があり、検査費用も年間100万円近い額がかかるそうで、大きな組織でない限り、なかなか取得しづらいのが現状なのだという。それでも投資するという選択をした浅川さんに、その理由について尋ねた。
浅川さん「GLOBALG.A.P.の認証を取得しているところからしか野菜を買わないという大型飲食店がすでに増えてきています。僕らも時代に乗り遅れないように、そして他の農園との差別化を図るために、できることはやっていこうという方針です。検査項目は細かく定められていて、例えば野菜を切る包丁の衛生管理方法などにもチェックが入ります。そうした一つ一つの項目をクリアしていくことで、お客様に安心して召し上がっていただけるのであれば、僕らも頑張る意味があるのかなと思っています。」
GLOBALG.A.P.の他にも、日本で基準が定められている「JGAP」、山梨で基準が定められている「やまなしGAP」などがあり、TRISEではその全ての認証を取得している。
さらに役員2名、社員5名がJGAP指導員基礎研修に合格しており、認証を取得したい生産者に指導することもできるそうだ。
浅川さんは、「来年には畑の面積を倍に増やして、その後もどんどん事業を拡大していきたい」と言う。明確なビジョンが思い描けているからこそ、こうした先行投資に思い切って踏み切ることができるのだろう。
高いチームワークで目指すTRISEの未来
浅川さんを筆頭に、勢いよく進み続けるTRISE。部長の坂下さん(写真右)も26歳と若く、主婦の多いパートの方々も二人の若さ溢れる奮闘っぷりに、「思わず付いていきたくなる」のだという。顧問の伊藤さんは、それを見守る父のような存在。そんなチームワークの取れたTRISEは、これからも未来に向かって真っ直ぐに歩みを進めていく。
浅川さん「みんなで壁を乗り越えながら事業の拡大を図り、多くの人を雇用して楽しく働ける環境をもっとつくっていきたいです。やっぱり周りにいろいろな人がいた方が、面白いじゃないですか。そのためには、多くの人にうちのレタスを知ってもらって、まずは『北杜市でレタスと言ったらTRISEだよね』と言ってもらえるようになりたいです。その道のプロになれるように、これからもみんなで力を合わせて頑張っていきたいと思います。」
TRISEのような若いメンバーを中心として楽しみながら農業を展開する会社があることで、それに続く若者が北杜市にももっと増えていくのかもしれない。