大泉町を拠点に事業を展開する株式会社TRISEは、自社で生産したレタス・青ねぎなどの野菜と提携農場から仕入れた野菜を全国の工場へ販売している。ここ3年で事業規模が3倍以上に拡大し、2025年には10周年の節目も迎えたTRISEの勢いの実態に迫るべく、代表の浅川和哉さんにお話を伺いました。
標高差を活かして年間を通じた生産を実現

おいしい水、爽やかな空気に恵まれた大泉町にある株式会社TRISE(トライズ)は、山梨県にある食品加工会社の経営のスリム化を図る目的で、野菜仕入れ部門を分社化したことをきっかけに2015年に設立された。役員3名、社員6名、パート2名、インドネシアからの特定技能実習生6名からなる組織であり、レタスを中心とした野菜の自社生産と仕入れ販売の2つの車輪で事業を展開している。

TRISEの生産拠点は北杜市大泉町・高根町、中央市、静岡県の4箇所にある。以前は標高約1,300メートルの野辺山高原で生産を行っていたが、野辺山高原の畑は提携農家に任せ、2023年から静岡県での生産をスタート。それにより、冬場も生産が可能となり年間を通して取引先に野菜を届けることができるようになった。
「山梨では11月中旬頃までしかレタスが採れないので、冬の仕事が極端に少ないことが当面の課題でした。2023年に静岡に住んでいる弟が役員として会社に加わったことをきっかけに、静岡でも生産をしてみようということになり、提携農家さん2戸と協力して静岡にも畑をつくりました。一年目は台風で池のように溜まってしまった水が全然捌けなくて大失敗。二年目になんとか立て直し、三年目にしてようやく綺麗なレタスが安定して採れるようになりました」
これまでの生産のノウハウがあっても、場所が変われば気候も変わり、水や肥料のあげ方もマルチの張り方も、何もかもが変わってくるのだという。浅川さんは温かい地域での生産を1から学び、仲間と共に一生懸命静岡での生産の基盤を整えた。

「当時はみんな日焼けで真っ黒になりながら、暑い中で動き回っていました。当時の僕は身だしなみに気を遣う余裕もなく髪の毛もボサボサで、みんなに心配されるくらい体重も落ちていました。それでもやっぱり何か新しいことに挑戦するときは、社長が魂を入れないと誰も付いてきてくれないと思うんです。あの頃の頑張りがあったからこそ、今は安心して冬を迎えられるようになったと思っています」
標高が高く気温の低い北杜市では、冬場の仕事がないことを課題に感じている農家が多い。繁忙期は休みなく働き、冬場は休息に充てるという人もいるが、人を雇用しているとなかなかそういうわけにもいかない。TRISEではこれまでも、寒さに強い野菜を生産してみたり、仕入れた玉ねぎの皮むきをして販売をしてみたりと、さまざまな試みを行ってきた。先頭に立って新たなことに果敢に挑戦する浅川さんの姿勢に導かれ、従業員たちも一丸となって力を注いだことで、ようやく冬場の課題に対する答えが見えてきたのだろう。
提携農場の力を借りながら

TRISEは生産の他に、卸し販売にも力を入れている。自社の畑の総面積は約13ヘクタールで繁忙期は1日約500ケース(6,000玉)のレタスを出荷しているが、自社生産による収益は3割ほどであり、残りの7割は提携農場の野菜を仕入れて販売することで生み出されている。
「ここ3年ほどで、提携農家数も販売先も大幅に増えました。これは自社の畑を安心して会社のメンバーに任せられるようになり、僕が営業に専念できるようになったから実現できたことです。今は約65ヘクタール分の提携農家さんの畑があり、野菜の袋サラダをつくっている工場や大型飲食チェーン店などに野菜を卸しています。野菜の配送は、毎日対応してくださる配送会社様のご協力によって成り立っています。うちは自社生産もしているので、品質管理のレベルの高さはもちろん、ある程度数の調整が効くという点も強みだと思います」
浅川さんは全国を飛び回り、多くの工場と取引を結んできた。取引先が別の工場を紹介してくれることも多く、最近は営業回りで県外に出ている日がほとんどだという。
「うちの卸し価格は決して安いわけではなく適正価格だと思いますが、会いに行って関係性を築いた上で毎回品質の良い野菜をお届けすることで信頼を得られているから、他の企業様にもご紹介いただけるのかなと思います。品質の良い野菜はつくれるけれど販売は苦手という農家さんも多いので、これからもそういった方々と協力して、お互いにメリットのある形で販売数を伸ばしていきたいです」
10年の節目を迎えて

TRISEは2025年5月1日に10周年を迎えた。浅川さんは10年間を振り返り、従業員たちに改めて感謝しながら、TRISEの未来について考える。
「ここまで続けて来られたのは、現場で頑張ってくれているみんなのおかげです。メンバーの入れ替えもほとんどなく、長く働いてくれている人ばかりなのがすごく嬉しいです。特定技能実習生としてインドネシアから来ている子たちも、日本語を勉強しながら一生懸命働いてくれていて、だいぶ頼れるようになってきました」

一番若い実習生は19歳で働くこと自体が初めてだったそうだが、従業員たちに温かく迎え入れられ、他の実習生と共に笑顔で働いている。9月には静岡の生産準備がはじまり、10月には山梨の畑も収穫のピークを迎えるため繁忙期は大忙しとのことだが、現場のフタッフが全力を注ぎ、役員も総出で出荷準備を行いながら、高いチームワークで繁忙期も乗り越えてきた。

「4年前に新設し、大きくていいなと思っていた大型冷蔵庫も今は手狭となり、同じ大きさのものがあと2つあってもいいのではと考えるようになりました。資材も燃料も高騰しているので慎重に考えねばなりませんが、どうにか保管場所を増やしていかないと追い付かないほど事業規模が拡大しているというのは嬉しい悲鳴です。『10年』と聞くと長く感じますが、一連の生産をまだ10回しか経験していないと思うと初心者みたいなもの。毎年気候条件も変わりますし、この先何が起こるかはわかりません。でも、みんなで協力して安心・安全で品質の高い野菜を全国へ届け続けるということは、今までもこれからも変わりません」
TRISEは静岡拠点の整備と提携農場の拡充、そして浅川さんの熱意溢れる営業により、この3年ほどで事業規模を大幅に拡大してきた。浅川さんやTRISEメンバーのいきいきとした表情からは、まだまだ変わり続けていくぞという姿勢やエネルギーが感じられる。TRISEが掲げる「いつでも挑戦、未来に飛躍。」という言葉の通り、TRISEはこれからも進化し続けていくのだろう。




