第1回「名水の里」米食味コンクールin北杜

2021年11月20日、須玉ふれあい館にて、北杜市フードバレー協議会主催の“第1回「名水の里」米食味コンクールin北杜”が開催された。

 

産地ブランド化と生産者の意識・技術向上を目的としたこのイベントでは、近隣生産者から出品された114検体の中から、食味や正粒度合いなどを評価する一次審査を通過した上位6名の米を官能検査(人間の五感を使って品質を判定する方法)によって審査し表彰を行った他、東洋ライス株式会社代表取締役社長の雑賀慶二氏や株式会社ちとせ研究所の研究者らによる講演、梨北農業協同組合による食味向上ミニ講習会、親子向けの体験教室などが開催され、生産者を中心とする約120名の市民が北杜市の米に親しみ理解を深めた。

 

今回の記事では、このコンクールの開催にかけた当協議会の想いと、当日の様子をお届けします。

 

「日本一美味しい米の産地を目指して」

世界に誇る「水の山」として注目を集める北杜市は、ミネラルウォーターにも使用される清らかな水、水捌けの良い土壌、日本一の日照時間といった自然環境に恵まれ、おいしい米が獲れることで高い評価を受けてきた土地である。

 

生産量で見ると、山間部に位置する山梨県は全体でも年間約25,800t(全国43位 ※農水省調べ)と少なく、そのうち約11,000tを生産する北杜市も、全国で見れば非常に小さな産地だ。

 

しかし、生産量が少ないというマイナス要素を「希少価値が高い」というプラス要素に変換し、「日本一美味しいお米」としてのポジションを掴むことができれば、その優位性で全国で勝負することが可能となり、今後も産地として生き残っていくことができるはずだと当協議会は考えている。

そのポジションを確立していくためには、産地のみんなで手を取り合い、常に意識と技術を向上させていくことが必要である。しかし、生産者が愛情を込めて生産した米を、自身で俯瞰的に見ることはむずかしい。

 

そこで、米に含まれるタンパク質・アミロース・脂肪酸度、保水膜などを測定し数値化することで、生産者が「自分の米の立ち位置」を把握し、「よりおいしくするための方法」を考えるきっかけや新たな学びの機会をつくることを目指し、今回のコンクールは開催された。

 

「名水の里」米食味コンクール in 北杜の様子

 

事前に行われた1次審査では、主に米に含まれるタンパク質及びアミロース、脂肪酸度を測定する食味計(静岡製機)と米の保水膜を測定する味度計(東洋ライス)を使用し、84名の生産者から出品された114検体を審査し、上位10検体に絞り込んだ。

コンクール当日は、上位6検体(同一生産者の米はより数値の高い方を採用)を同じ条件で炊き上げ、フードバレー協議会会長・市長・農協組合長・NOSAI山梨組合長・県職員・株式会社東洋ライスの品質管理担当、生産者代表の計8名で官能審査を行った。

 

2次審査に進んだ6検体は、1次審査の平均点70点を大きく上回る85点以上を獲得し、全国でもトップを狙えるレベルの米が出揃っていた。数値としてはほとんど差がないため、口に入れたときのファーストインパクトや噛みごたえ、舌触りなどの僅かな差を代表者たちが五感を使って審査がなされた。

官能審査が行われている間、大ホールでは、東洋ライス株式会社代表取締役社長の雑賀慶二氏と株式会社ちとせ研究所の研究者らによる講演が行われた。

「日本が世界に誇るお米の可能性」と題した雑賀氏の講演では、長年研究を重ねてきた精米方法と医療費増加や環境汚染などの関係性についての研究過程の報告がなされ、米の削り方一つを変えることが日本の超高齢化社会の医療費の削減に繋がる可能性があることなどについての見解が述べられた。

「微生物の視点から考える土作りと堆肥について」と題した株式会社ちとせ研究所の研究者らによる講演では、土づくりの基本で使う堆肥について、完熟だと微生物にとっての餌が限りなく少なくなっており、中熟状態で投入することが作物にとって最大効果が現れると研究成果を交えて報告が述べられた。

同時に2階の会議室では、「梨北農業協同組合による食味向上ミニ講習会」が開催され、気候変動と米の胴割れの関係性や、それを防ぐために堆肥を有効活用する方法などについての説明があった。

また、調理室にて開催された東洋ライス株式会社部長の谷口氏による体験教室「おやこで朝ごはんの大切さについて見つめなおそう」には、約9組の親子が参加し、お米の脱穀・精米を体験したり、朝ごはんの大切さや美味しいお米の炊き方などを学ぶ時間となった。

ホワイエには全出品者の玄米を展示していたため、来場した生産者同士で「どのようにつくっているのか」という情報交換の場にもなっていたのも印象的だった。

 

入選結果の発表

今回の“第1回「名水の里」米食味コンクールin北杜”では、以下の11名・2法人が見事入選を果たした。

 

▼今回の入選者

・グランプリ  原 圭吾 様(高根町)

・準グランプリ 清水 岩男 様(明野町)

・準グランプリ 長田 冨丈 様(明野町)

・金賞     中山 泉 様(武川町)

・金賞     古屋 一仁 様(白州町)

・金賞     高瀬 弘樹 様(須玉町)

(※1次審査において上位6名に選ばれた方々で、官能審査によって確定しました。)

・特別賞    鈴木 啓志 様(白州町)

・特別賞    石毛 康高 様(小淵沢町)

・特別賞    有限会社 武川農産 様(武川町)

・審査委員賞  下條 宏之 様(高根町)

・審査委員賞  農事組合法人 武川ファーム組合 様(武川町)

・審査委員賞  青野 武 様(長坂町)

・審査委員賞  小池 次郎 様(大泉町)

(※整粒値60%以上、食味計及び味度計において80点以上の方々で、農法、品種、生産規模、年齢、標高などの区分で抽出した方々から審査員に選んでいただきました。)

 

今後入選者には、特典協賛企業とのマッチング会が用意され、北杜市のふるさと納税の返礼品としての買い取りや企業による買い取りが行われる予定だ。

また、当コンクールでは入選者以外に対しても、検査結果のスコア表を出品者全員に渡している。生産者はそれを持って肥料メーカーを訪ね、自分の米の欠点に適した肥料について相談することができる。

 

正しく自分の米の立ち位置や改善点を把握し、みんなで技術について学び合い、次回のコンクールでまた数値を測定し、生産者同士で切磋琢磨していく。このコンクールが、今後そのような生産者にとっての成長の場となっていくことを願い、今後も継続していけたらと思う。

 

北杜市の農耕文化を守っていくために

日本の食の原点と言える農耕文化は、米だけでなく、“地域コミュニティ”をつくってきた大切な文化だ。米の消費の低迷、米価の下落などの厳しい状況下において、農業後継者も減少しているという状況を打破しこの農耕文化を未来に残していくためには、「稼げる農業」を実現していく必要がある。

 

今回の米食味コンクールは、そのための生産者の意識・技術向上への貴重な一歩となったのではないだろうか。

 

市としても、このコンクールを毎年開催してデータを蓄積していくことで、標高帯や栽培方法ごとの傾向などを分析し、生産者への適切なアドバイスができるようになるというメリットも考えられる。

 

今後も北杜市フードバレー協議会は、北杜市や生産者と手を取り合って、世界に誇れるおいしい農作物づくりを推進し、この恵まれた自然環境とここで育まれてきた文化を守っていきたい。